2004年2月29日日曜日

街の音風景

街行く人々のヘッドホンから流れる音楽を聴くラジオ番組
WIRED NEWS

イギリスとアメリカのラジオ番組で、街中をウォークマンをかけて歩く人達から、聴いている音楽とコメントを収集するという試みが行われた。

どちらも文化的に刺激的な場所なので、単純に面白そうだと思った。何喰わぬ顔で歩いている人が聴いている音楽が、実は「ユーロ・ポップのビートに乗ったシャーマンの祈祷」だったりしたら、面白いじゃないか!
しかし記事を読んでみると、「音楽とは本質的に共同で分かち合うものであり、ヘッドホン・ステレオは音楽による社会体験を損なわせている」という考え方もあるようで、頭の堅い人はそう捉えてしまうようだ。

僕は、ウォークマンは音楽を手軽にどこでも聴けるようにすることで、人々の音楽に親しむ時間を伸ばし、その結果音楽をより日常の中に取り込むことに貢献したと考える。
「共同で分かち合う」という点にこだわるなら、チケットの高騰や音楽を聴く「場」を設置できない社会に原因があるのではないだろうか?

それにウォークマンをしてなくたって、頭の中で音楽が鳴っている人は多いはずだ。

The Unforgettable Fire -1984-

ybsrcwee.JPGThe Unforgettable Fire

U2の音が形作られたアルバム。
ブライアン・イーノとダニエル・ラノアによるプロデュースがU2を違う次元に押し上げた。

U2と聞いて思い浮かべるあの音はこのアルバムから始まった。
どこか冷たく奥行きのある音。その荒涼とした音空間の中で、ボノの歌声は増々力強さを増し、神に祈るように、だけど自分に語り聞かせるように歌う。

I'm wide awake, I'm wide awake, wide awake
I'm not sleeping

マーティン・ルーサー・キング牧師に捧げた「Pride( In The Name Of Love)」「MLK」にはU2の政治的意志が感じられる。
後々映画「魂の叫び」の中で、アダムが「政治と音楽を混ぜるなという奴がいるが、冗談じゃない!」と怒りを露にする場面があるが、確かにU2は黙っちゃいない。

歌詞に目を落としてみても、格段にheavyな詞が書かれている。(「heavy」はB・B・キングがボノに対して言った言葉。)
政治的意志を力強く宣言する一方、ボノは常に問いかけ、祈る。

if the mountains should crumble
or disappear into the sea
not a tear, no not I
stay this time stay tonight
ever after is loving time

U2はこのアルバムを作り上げた事によって、音楽と心の旅に出発したのだ。

2004年2月23日月曜日

WAR -1983-

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War


80年代のU2を象徴する政治色が色濃く出たアルバム。
そして代表曲の一つ「Sunday Bloody Sunday」が収録されている。
アイルランドで1972年に起きた「血の日曜日」(血の大晦日と勘違いしてはいけない)事件を取り上げた曲だ。
ラリーの躍動感のあるドラムで始まり、エッジのギターが絡んでいくあたり、僕の鼓動は高まっていく。当然のごとくボノの歌声には力が入り、徐々に心を熱くする。

この一曲目を聴いた瞬間、これまでの2枚とは明らかにクオリティが違うと分かる。先ずドラムの生々しい音に耳を奪われるはずだ。さらに、エッジのギターカッティングが鋭く響き、独特のリフが縦横無尽に展開されていく。
最近のライブでもよく演奏されている「New Year's Day」をはじめとして、アルバム全体を通して楽曲のクオリティが格段に向上している。歌詞に目を向けても、ボノの政治的世界観がくっきりと浮かび上がっている。無意味な争いへの警鐘。「WAR」というタイトルがU2の強いメッセージだ。

How long to sing this song
I will sing, sing a new song

デビューした当初は、ニューウェイブのパンキッシュなバンドとして捉えられていたU2が、ここでしっかりと大地に根を下ろした唯一無比のバンドとして記憶されていく。
こんなにまで、無垢で真直ぐに正義を唱えるロックバンドなんて他に見当たらない。そりゃダサイのかもしれないが、それでもかっこいいのだ。

僕の中では(多分世間一般も)U2はこのアルバムでU2となったのだ。

2004年2月20日金曜日

OCTOBER -1981-

vwyfv2vt.JPGOctober

U2、2毎目のアルバム。

基本的に1枚目の延長線上にある。1枚目よりは曲の単調さが克服されているし、ボノの歌唱法も徐々に作り上げられつつあるといった感じ。
1曲目の「Gloria」には同郷の大先輩ヴァン・モリソンが在籍していたゼムの「Gloria」を意識していると感じるし、「Tommorow」ではバグパイプを導入している辺り、アイルランド人であることを強く打ち出していると考えられる。
元々政治的に抑圧された環境で育っている人達なので、僕の受ける印象に間違いはないのだろう。
それにしても1枚目同様、僕の中ではあまりU2のアルバムとして認識されていない(したくない)
アルバムであることに変わりはない。

少しだけ成長したU2は次のアルバム「WAR」で飛躍していくことになる。

2004年2月19日木曜日

BOY

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Boy

U2が先週から新作のレコーディングに入ったのを機会に、これまでのアルバムを振り返ってみたい。あくまでも個人的に。U2は僕が最も敬愛するロックバンドである。

BOY -1980-

僕が初めて耳にしたU2の曲は「With or Without You」であり、初めて手にしたアルバムは「Joshua Tree」だった。当然、このデビューアルバムは遡って聴いた事になる。
しかし誰が同じバンドの音だと思うだろうか?
確かにボノの張り裂けんばかりの歌声と、エッジの鋭いカッティングが耳に届いてくる。しかし、全体から受ける印象は演奏の下手なパッとしない2流バンドである。良く言えば、その後ロックの革新を図ることになるバンドの、初期の胎動が感じられるといったところか。
リアルタイムでこのアルバムを聴く事はなかったが、初めにこのアルバムを聴いていたら僕がU2に注目することはなかったかもしれない。

2004年2月16日月曜日

メビウスの輪

前々から面白い事をやってるなと思っていたビデオジャーナリスト神田敏晶さんのブログに「ベーコン数」という記事が載っていた。
世界の誰もが6人を経由するうちに、ケビン・ベーコンにたどり着けるというものだ。
「新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く」という本で展開されている話しらしいのだが、ちょっと強引な気がしてしまう。(笑)
事実、僕はケビン・ベーコンに6人どころかたどり着く事さえ怪しい。(笑)
とは言え、この本は「ネットワーク」をキーワードに現在の世界情勢に対する鋭い指摘も盛り込まれているようで、興味深い。

2004年2月10日火曜日

嬉しい

日々の生活の中で、そう思える事がどれだけあるだろう?

最近僕はその「嬉しい」を感じる事が多々ある。
極々個人的な事なのだが、人生の選択に差し迫られており、その選択の段階に何故か「嬉しい」が現れてきたのだ。(笑)

苦しんでいる時には、ちょっとした心遣いを受けたり、自分の好物を見つけてしまうだけで嬉しいものだ。ボーカーフェースの僕は、端から見るとあまり苦しんでいる様に見えないようだが。(笑)

「喜び」を感じられる音楽はめったに無いと、僕の敬愛するミュージシャンが言っていた。
確かにそうだ。音楽に「喜び」の感情を起こされた事はないかもしれない。
「嬉しい」はどうだろう?それも難しいかもしれない。

僕達がモノを買う場面では、先ずそのモノを気に入る。そしてそれが高価なものなら幾分躊躇してお金を払うわけだが、その後手に入れたという「嬉しさ」が込み上げてこないだろうか?
この時「欲しい」が「嬉しい」に取って変わる。ひょっとしたら僕達は、欲求を満たした後の「嬉しい」という感情を買っているのではないだろうか?

嘘だと思うなら、自分の気持ちを振り返ってみればいい!

2004年2月9日月曜日

情熱と現実と・・・

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僕には映画監督になりたいという夢があった。
それは、ジャン・リュック・ゴダールの映像を撮る行為、
ビクトル・エリセの深い詩的な映像、
レオス・カラックスの映画愛、
ヴィム・ヴェンダースの映像にかける熱意、
ジム・ジャームッシュの実験的な映像、
そして、ケン・ローチの暖かい眼差しに影響されたものだった。

ふとした会話の中で、忘れていた感情が蘇った。
諦めてしまっていたのだろうか?
いや、諦めてはいない。
諦めない限り、可能性はそこにある。

僕は映画こそが総合芸術だと考えている。
一人だけ賛同してくれた人がいた。
しかし現実において映画は、娯楽産業の一つ、エンターテイメントと考える人がほとんどではないだろうか?
ハリウッド的映画生産法の確立。
予定調和のストーリー。売るために作られた映画。

それが良い悪いではなく、自分が求めたものを創りたくなった。
夢は諦めたくないと、急に思い立った。

2004年2月7日土曜日

Norah Jones - feels like home

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Feels Like Home

最初に聴いた印象では地味さが残った。多分前作の「Don't Know Why」のようなキャッチーな曲が無かったためだろう。
全体的に抑えたトーン、リラックスした雰囲気が漂っている。

そして、くり返し聴いている今はするめ状態である。毎日聴かないと気が済まない。(笑)
ノラの歌唱力、表現力はライブをこなしてきたことで格段に良くなったと感じる。前作では、ブルージーな曲の歌い回しに、どうもかわい子ちゃんが頑張っているという印象しか持てなかったが、最新作にはそんな印象を持たない。
それにしても、彼女の歌声とピアノの、全体を通したこの柔らかなトーンはどうだろう?
グラミー賞を総嘗めにして周りが騒がしくなったと同時に、環境面では豊かになった筈だ。音楽に没頭できる余裕がそうさせたのだろうか?

ノラのDVD「Live in New Orleans」を観てザ・バンドのファンだという事は分っていたが、今作の音作りや曲作りにそれを再確認できた。
アレサ・フランクリンやボニー・レイットという、ソウルやブルースロックを体現してきた先人を尊敬している辺りに、アメリカ音楽の良心を垣間見る事ができる。彼女の音楽はジャズの枠に納まるものではないということだ。

デューク・エリントンの「Melancholia」に歌詞を付けた「Don't Miss You At All」にセンスの良さと、新たな可能性も見えた。

2004年2月3日火曜日

情調オルガン

873bxwwk.GIF人の感情や能力を常時監視するシステム
Hotwired

僕はこの記事を読んでアンドロイドは電気羊の夢を見たか?(映画「ブレードランナー」が有名)に出てくる情調(ムード)オルガンを思い出した。
感情の監視システムは、いずれ感情をコントロールするものに変わっていくだろう。プライバシーがどうのという議論もあるようだけど、それよりもその先に見えてくるものの方が恐ろしい。

「アンドロイド~」は情調オルガンによって感情をコントロールしている人間と、アンドロイドにはどんな違いがあるのだ?という未来への警鐘を含んでいた。僕はこの記事にそんな未来を感じてしまう。

 

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