2005年12月11日日曜日

床にあるドア~未亡人の一年

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アーヴィング自身による脚本の映画を先に観た。
確かにある意味においては本人が満足しているのもわかる。
「未亡人の一年」という作品をすべて映像化することは、ほぼ不可能な話だろう。
そういった意味で、原作の3分の1の映像化には成功している。
しかし、原作を知らずにこの映画だけを観た場合、「?」と思わざるをえない。
「床にあるドア」というメタファーが表しているものは確かに提示されているのだけど、
そこで映画が終わってしまうため未消化な部分や、喉に何か詰まっているような
気持ちの悪い感覚が残ってしまうのだ。
「だから、何を言いたいのだ」と。

すぐに原作を読んでみた。久々にアーヴィングを読んだけど実にアーヴィングらしい
パワフルな現代の寓話が綴られていると思った。
そして、映画よりもなんと面白いことか。
確かにこの物語の重要な部分を含んでいるとはいえ、映像化されたのは
あくまでもプロローグであり、その後の展開にアーヴィングの物語の真骨頂がある。
登場人物はそれぞれに心の一部に欠けた部分を抱えながら生きていく。
しかしアーヴィングはそこだけを描いて重苦しく暗い物語にすることはしない。
必ず人生の悲喜こもごもすべてを物語に注入する。
だからこそ表情豊でパワフルな物語になるのだろう。

アーヴィングの作品にはいびつで不器用な人物が登場し、解決することのない問題を
抱えながら生きている。人間のグロテスクな部分を決して隠したりはしないし、
どんな人生にもユーモアという要素があるということを示してくれる。
読んだ後はいつも、パワフルに生きなくてはと思わせてくれる。

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