2005年5月8日日曜日

生と向かい合う - 海を飛ぶ夢

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海を飛ぶ夢


この映画はありきたりの言葉を使えば「人間の尊厳」をテーマとしている。
彼(主人公)は事故によって体の自由を失い、家族の手によって“生かされてきた”
しかしその生き方に疑問を感じ、生きる目的を失ってしまうことによって、
誰も答えを出すことのできない“人間の尊厳”を行使してしまう。



彼が提示した意志を否定することはできないと感じた。
でもそれに確信を持っているわけでもない。
彼が信頼を寄せた女性の、裏切りとも呼べる最後の選択も否定できない。
僕個人として、目の前に提示されたものを受け入れることしかできないという
歯痒さのようなものを感じた。日常の中で、健常者である自分は、
“生”と向かい合ったことがあっただろうか?
“死”について考えたことはあっても、“生”は空気のようにそこにあるものとして、
意識することもそれほどなかった。豊かな人生にしたいという想いはあっても、
“生”は地球が自転しているのと同じぐらい絶対的な事実として、
脳の奥深いところに小さくなってしまわれていた。


これは実話に基づき作られた映画で、見終わったからといってそこに答えが
用意されているわけでもない。ただそういう事があったのだと、
決して甘くはない現実を投げ付けられたまま、観客は放置されてしまうのだ。
綺麗事で終わる感傷的な映画を観たいならやめた方がいい。
厳しい現実を優しい眼差しで見つめた、静かな感動を得たいのなら観てもいい。


僕はこの映画を観てイギリスのケン・ローチを思い出した。
エンターテイメントではない、メッセージを伝える手段としての映画。


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