2004年7月8日木曜日
July,July
世界のすべての七月
ティム・オブライエンの作品。「本当の戦争の話をしよう」以来久しぶりの作品だけど、この作家の作品には一貫した何かがあって僕はそれに惹き付けられるのだと再確認した。その何かは、はっきりと言葉にはできないけれど。
文章はどちらかというと無骨で、スマートな表現はないのだけど、時々美しいセンテンスが現れる。それがセンチメンタルに流され過ぎることもなく、どこか乾いた悲しみを感じさせる。そういった一見矛盾するような部分が魅力なのかもしれない。
でも、それにも増して読者を惹き付けるのは物語りを前に進めていく力強さみたいなものだと感じる。ここに登場する人物はみなどこか失われて、惑いながら生きているのだけど、それぞれが人間的な弱さを持っているが故に魅力を放っている。
感傷的ではあるけれども、大人の哀愁を描いた甘くない小説だと感じた。
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