2005年9月12日月曜日

Bob Dylan Chronicles

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本人がいくら否定しようが、カリスマであるという事実には変わりなく。
その音楽がたとえ今の時代に適合しないとしても、過去にその音楽が限りなく大きな影響力を
持っていたことは、多くの人の知るところでもあり、そういった意味でこの自伝は
非常に興味深いものだと思う。

まず驚かされるのは、これがもしフィクションであったとしても、その記憶力の凄さだ。
何故そういう事に至ったのかという経緯の説明が事細かに記されている。
しかも、ボブ・ディランを知っている人ならば想像できるかもしれないが、
その描写が詩的で美しい。その描写を読むことがこの自伝を読む十分な目的となる。
長い音楽活動の中における心理的葛藤が語られていることも興味深い。

構成は単純な時系列ではなく、今の時点から過去を振り返り、内容に応じて時代を
縦横無尽に飛び回る。まさにボブ・ディランらしいクロニクルとなっている。
個人的には、いきなり80年代後半にワープして、U2のボノとの会話から
ダニエル・ラノアとのアルバム制作に入り、新たに音楽に対して開眼していくくだりが
とても興味深く面白かった。「ダニーと私がつくっている音楽は古くさい」と
時代をきちんと認識して、尚かつそう言ってしまえるところに凄さを感じた。

これはまだ第一集であり、今後2冊出版する契約を出版社と結んでいるらしい。
とても楽しみだけど、未完に終わってしまうという結末もなんとなく想像され、
その予感が当たらないことを祈りたい。

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