2006年9月24日日曜日

ブレッソン 「見ること」の意味

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アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶



こんなドキュメンタリーが撮られていたことに驚き、嬉しく思った。
ブレッソンの佇まいには達観した余裕のようなものが感じられ、
発せられる数々の言葉にはシンプルだけど深い意味が込められている。
BGMにはブレッソンが好きなバッハやモーツァルトが使われ、
作品全体のトーンを色づけていた。


劇中イザベル・ユペールが「彼は言葉の後の沈黙を捉えていた。」と
語っていたが、同時に映し出されるブレッソンの作品がそれを証明していた。
ポートレイトも数多く映し出されたが、マリリン・モンローの写真と
それを語るアーサー・ミラーの言葉は特に印象的だった。
ブレッソンが捉えた瞬間は、普段我々が見て知っているそれとは異なり
まさにその人の本質が見える瞬間なのだ。


「見ることが大事だ」
シンプルで当たり前すぎる言葉かもしれないけど、
ブレッソンの口から発せられるとき、多くの意味を感じることができる。
風景を撮るときに一瞬のその瞬間を逃さず、ポートレイトを撮るときに
モデルの人格を見抜く。そして一瞬を捉えたその写真に物語が生まれる。
他の多くの人が見過ごしている一瞬を見る、それは物事の本質を見ることを意味しているのだ。
思えばそれは、人生全てにおいて大事なことではないだろうか。
人との関係において。仕事において。


また、どこかユーモアも感じさせる生き生きとした作品が生まれたのは、
次の言葉に表される姿勢があったからこそだろう。

「写真のための人生なんて悲しい、生きているからこそそこに写真が生まれるのだ」

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