2010年4月11日日曜日

杉本博司 「少年スギモトはいかにしてHiroshi Sugimotoとなったか」


U2のCDにサイン!


会社のU2ファン仲間に誘われ杉本博司さんの講演会に行ってきた。

僕は元々2005年に森美術館で開かれた展覧会「時間の終わり」で杉本さんの
モノトーンの世界に触れファンになったのだが、まさかのU2新作ジャケット採用で、
U2ファン仲間での参戦となった(笑)。

最初のニューヨークのアトリエ拡充の近況を映像で紹介してくれるくだりから、
オブジェの制作や茶室工事を指揮する姿で、彼のなんでも自分で作るスタンスが
見て取れて、人となりに気付かされることになる。

そして有名なシアターやジオラマの作品が実は博物館や映画館でのアポ無し隠し撮りに始まる
という逸話に笑わされながらも、作ることに対する情熱が伺えたし、シアターシリーズに
使われている映画が実は「サタデーナイトフィーバー」だったりするという、
あまり耳にしたくない情報には彼の遊び心が感じられた。

子供の頃の時代背景に合わせて工作少年だったエピソード、12歳ぐらいで既に焼き方にこだわる
写真家気質を持っていたという話しを聞いたが、それが62歳になる今も基本的な性質は変わっていない。
何かを作り続ける人のマインドはそういうものだと思った。

杉本さんは今後も銀塩を続けるとのこと。デジタル化はあくまでもメディア入稿のため。
プラモデルが出てきたときに、誰が作っても同じになるなんてふざけるな!と思ったそうだが、
フィルムが減っていくことはむしろ喜ばしいと語っていた。
むしろ自分が作る作品のオリジナル性に繋がると。

聞き手の鈴木芳雄さん(元ブルータス副編集長)によるこの講演のダイジェスト


おまけにU2のエピソード。
本人はビートルズ、ストーンズ世代でピンク・フロイドで止まったと言っていて、
U2をよく知らなかったが、知人に地中海に面した南仏のボノの別荘に連れられて行き、
ボノから海景シリーズのファンでこの地中海を撮って欲しいと頼まれた。
そのとき、断るつもりで「U2の文字とかアルバムタイトルを入れないのであれば」と
言ったけど、本当にその通りにするということと、リードタイトルのNo Line On The Horizonの
レコーディングに呼ばれたりして逃げられなくなったとのこと(笑)。
面白いのは、ボノと意気投合してこの取り組みはお金のやり取り無しにして、
石器時代の物々交換のようにお互いの作品を使う権利の交換にしたということだ。

このエピソードは安藤忠雄さんとの対談にも出てくる。

2010年4月3日土曜日

Brad Mehldau Highway Rider



ブラッド・メルドーが素晴らしい音楽を創り出してくれた!
このところ傾倒していたオーケストレーションが見事に昇華したアルバムだ。
オーケストラによる力強くかつ美しいメロディーが随所に散りばめられ、
それを拾うようにメルドートリオが躍動する。そしてもちろんメルドーのソロも冴え渡り、
全体を指揮しながらインプロヴィゼーションに導いていく。
ジョシュア・レッドマンも非常に良いパフォーマンスで音楽の展開に意外なエッセンスを加えてくれている。
2枚組みのアルバム全編を通して聴くと、まるで映画を観終わったかのような感覚だ。
ジャズアルバムを聴いてこんなに興奮したのは初めてだと思う。

長調と短調が折り重なるメルドーの旋律は、このアルバムで遂に完成形に近づいたような気がする。

もはやキース・ジャレットと比較することもない。
ブラッド・メルドーという音楽がこのアルバムで形作られたのだ。
 

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