2006年9月3日日曜日

この疾患を治癒させるために破壊する

横浜美術館で開かれている日本画展に足を運んだ。

藤井雷と松井冬子のトークイベントが開かれるということもあり、
美貌で噂の松井冬子を生で見てみたいというミーハー根性もあったが、
彼女の絵を実際に見てみたいという気持ちが強かった。

中でも非常に素晴らしいと感じたのが「この疾患を治癒させるために破壊する」。
共感と共に嫉妬のような感覚までも覚えてしまった。
この絵に出合えて良かったとも思えた。
彼女の絵には女性固有の感性が感じられるけれど、この絵の美しさと恐ろしい吸引力
のようなものにはそんな枠を取り払ってしまえる力を感じた。
これまでに見たどの絵とも異なる存在感。
単に日本画と括ってしまうことには違和感を感じる。


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松井冬子   この疾患を治癒させるために破壊する


彼女の絵には一貫した闇が感じられるのだが、制作は太陽の光の届かない地下室を
アトリエとして、しかも深夜に行われているという。
音のないしんとした時間帯が集中できると語っていた。
BGMはテクノミュージック。一種のトランス状態を演出するのだろうか。
確かに日光が燦々と照りつける日中に描ける絵ではない。

印象的な発言に『光は時間だと思う』という言葉があった。
そう言われてみると、「この疾患を治癒させるために破壊する」が放つ光は
確かに時間の流れを感じさせる。
彼女が描く絵には一見してグロテスクなものもあるが、彼女自身にネガティブな発想はない。
その言葉からはむしろポジティブな思想を感じる。
自分が存在している環境やそれに伴う感情を在るがままに受け入れて、
時間の流れに身を任せていくような。


日本画にはその周辺の状況から偏見があった。
だけど、今回展示されている画家の作品を見てその偏見は取り除かねばと反省した。
ここでは他の画家の作品には触れないが、ここ最近にない面白い展示会だった。
今の日本だからこそ出てくる感性なのだろう。


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