2004年10月20日水曜日

人格は記憶に左右されるのだろうか?

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2/3の不在


電車に乗る際の暇つぶしに買ってみた本だけど、思わぬ拾いものだった。
美しい描写にぐいぐい物語りに引き込まれていくのと、主人公の置かれた状況が
12歳以降の記憶を無くしてしまった36歳の男性という設定も、興味深く小説に
引き込まれる要因だった。

身近にいる人達は、彼が記憶をなくした事を手に取れる実感として受け止められない。
だって見た目は何も変わらないのだから。
彼に悪意はなくとも、人々は徐々に離れていってしまう。
奥さんと、記憶を無くした彼のやりきれない心理描写は、もし自分が記憶を
無くした場合にそのような状況に陥ってしまうだろうと思わせる程リアルだ。

そしてこの小説は、途中から思わぬ方向へ展開していく。
記憶と人格という大きなテーマを掲げながら。。
記憶が単なる情報に過ぎないとしたら、それに影響されてしまう人格は、
人々が思っているほど絶対的なものではないのだろうか?
経験と記憶は人格にどのように関わっていくのだろうか?
そんな事を考えさせられた。

もしここ10年間の記憶を失ったとしたら、果たしてこれから進もうと思っていた道を
歩んでいけるのだろうか?愛する人は他人になってしまうのだろうか?
自我とは何なのだろうか?

以下、ネタバレ注意











他人の記憶を移植するという突飛もない実験に参加した彼は、
移植された記憶に気も狂わんばかりとなってしまう。
誰しも、人の心を覗いてみたいと思うことがあるかもしれない。
しかしそれは危険な賭けなのだ。

体験していないけど実感として頭の中に存在する記憶。
それは不確かだけど確かな感触を残す。
空恐ろしい気もするが、例えば自分の尊敬する人物の記憶をもつことが
できるとしたら、どんな気持ちがするのだろうか?



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